愛犬が体を頻繁に掻いている、皮膚が赤くなっている——そんな症状が続くなら、アトピー性皮膚炎の可能性があります。犬のアトピー性皮膚炎は完治が難しく、生涯にわたって付き合っていく必要のある病気です。
この記事では、獣医学で使われるFavrotの診断基準(2010年)をもとにしたチェックリストや、好発犬種、症状が出やすい部位、治療の考え方について解説します。
犬のアトピー性皮膚炎とは
犬のアトピー性皮膚炎は、花粉・ハウスダスト・ダニなどの環境アレルゲンに対して免疫が過剰に反応し、強いかゆみと皮膚の炎症を引き起こす慢性的な皮膚疾患です。
人間のアトピーは成長とともに改善することもありますが、犬の場合は完全な原因解明がされておらず、生活環境の影響も大きいため完治が難しいとされています。そのため、獣医師と相談しながら生涯にわたって治療を続け、生活の質(QOL)を下げないようにコントロールしていくことが大切です。
アトピー性皮膚炎のチェックリスト(Favrot基準)
以下はFavrotによる犬アトピー性皮膚炎の診断基準(2010年)に基づくチェックリストです。8項目のうち5項目以上が当てはまると、約80%の確率でアトピー性皮膚炎と診断されます。
- 最初に症状が出たのが3歳以下である
- 基本的に室内飼育である
- ステロイドを使うとかゆみがおさまる
- マラセチアによる皮膚炎を繰り返す
- 前足に症状がある
- 耳(耳介)に症状がある
- 耳の縁には症状がない
- 体の中心の背中側には症状がない
※ 参考:Favrot C, et al. “A prospective study on the clinical features of chronic canine atopic dermatitis and its diagnosis.” Vet Dermatol. 2010.
このチェックリストはあくまで目安です。皮膚疾患がなかなか治らない、すぐに再発するなどの症状が続く場合は、獣医師に相談して正式な診断を受けましょう。
アトピー性皮膚炎になりやすい犬種
アトピー性皮膚炎には遺伝的な素因が関わっており、以下の犬種は特に発症しやすい(好発犬種)とされています。
- 柴犬:日本で最もアトピー性皮膚炎が多い犬種のひとつ
- フレンチ・ブルドッグ:皮膚のしわに汚れが溜まりやすく悪化しやすい
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア:皮膚が敏感でアレルギー体質の子が多い
- ゴールデン・レトリバー / ラブラドール・レトリバー
- シーズー / ヨークシャー・テリア
ただし、上記以外の犬種でもアトピー性皮膚炎を発症することはあります。犬種に関わらず、かゆみや皮膚トラブルが続く場合は注意が必要です。
症状が出やすい部位
アトピー性皮膚炎は体の特定の部位に症状が出やすいのが特徴です。
- 耳の内側(耳介):外耳炎を繰り返すことが多い
- 前足(指の間・手首):しきりに舐めたり噛んだりする
- 脇の下・内股:皮膚が薄く赤くなりやすい
- 目の周り・口の周り:赤みや脱毛が見られる
- お腹:毛が薄いため炎症が目立ちやすい
一方で、背中の中心部分には症状が出にくいのもアトピー性皮膚炎の特徴です。背中に強い症状がある場合は、ノミアレルギーなど別の皮膚疾患の可能性も考えられます。
治療とケアの基本的な考え方
アトピー性皮膚炎の治療は、症状の重さに応じて以下を組み合わせて行います。
- 薬物療法:ステロイド、免疫抑制剤(シクロスポリンなど)、分子標的薬(オクラシチニブ)で炎症とかゆみを抑える
- スキンケア:保湿シャンプーや保湿剤で皮膚バリアを整える
- 環境管理:こまめな掃除、空気清浄機の使用、寝具の洗濯でアレルゲンを減らす
- 食事管理:皮膚の健康をサポートする脂肪酸(EPA・DHA)を含むフードの検討
アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴うため、症状が悪化すると眠れない、体をひどく掻きむしるなど愛犬の生活に大きな影響を与えます。早めの診断と適切な治療で、かゆみをコントロールしてあげましょう。
まとめ
Favrotの診断基準8項目のうち5項目以上に当てはまれば、アトピー性皮膚炎の可能性が約80%とされています。完治は難しい病気ですが、適切な治療とスキンケア、環境管理を続けることで症状をコントロールし、愛犬のQOLを守ることができます。
皮膚のかゆみや赤みが治らない場合は、早めに獣医師に相談してチェックリストの結果も伝えてみてください。
