著作者:jcomp/出典:Freepik
アトピー性皮膚炎における免疫系の異常は、『遺伝や生まれつきの体質』と考えられていました。しかし、近年の研究では、アトピー性皮膚炎を発症した乳児は、生後4〜6ヶ月で腸内フローラ*1に異常が生じ(ディスバイオーシス*2)、『短鎖脂肪酸*3』が減少していることがわかっています。
また、2〜6歳のアトピー性皮膚炎のわんちゃんにおいて、マイクロバイオーム*4を投与し、アトピー性皮膚炎が改善したというエビデンスもあります。
つまり、腸活によって腸内フローラを整えることで、アトピー性皮膚炎の改善・予防に役立つかもしれません。
今回は免疫に関わっている『短鎖脂肪酸』について、簡単に説明します。
『短鎖脂肪酸』の働きと腸活・アトピーの関係性について
免疫にとって大切な『短鎖脂肪酸』の働きについてお話します。
『短鎖脂肪酸』とは、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖などを発酵させることで生成される、脂肪酸のことを指します。
短鎖脂肪酸はには、以下のようなさまざまな役割があります。
・上皮細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源として利用される
・肝臓や筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用される
・腸内を弱酸性の環境に保つことで、有害な菌の増殖を抑制する
・大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する
・免疫反応を制御する
腸内細菌の乱れが生じると『短鎖脂肪酸』が生成される数も減るため、免疫機能のバランスが崩れる原因となり、アトピー性皮膚炎を発症する可能性があります。
人の腸内細菌は3〜5歳で決まると言われていますが、わんちゃんも人と同様に生後6ヶ月以内に腸活を行うことで、腸内細菌のバランスを整え、アトピー性皮膚炎の発症を予防することができるかもしれません。
また、腸内細菌のバランスが乱れると、アトピー性皮膚炎だけでなく、アレルギーや肥満、糖尿病など、様々な疾患を招く原因になります。
生後6ヶ月を過ぎても日頃の体調管理や疾患の予防のために、腸活を継続していきましょう。
*1腸内に棲んでいる細菌が腸の壁に張り付いて、菌種ごとの塊になっている状態 お花畑(flora)にみえることから「腸内フローラ」と呼ばれている
*2生活習慣などの様々な理由によって腸内フローラに乱れが生じること
*3短鎖脂肪酸は酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあり、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵することにより生成される
*体に共生する微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)の総体のこと
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